ハワイにそびえる「日立の樹」の現在地――50年を超えて愛される「この木なんの木」の知られざる歴史と奇跡の物語【2026年最新現地ルポ】
この 木 なん の 木 の 木として、世代を超えて日本人の心に深く刻み込まれてきた大樹が、太平洋の風が吹き抜けるハワイ・オアフ島に佇んでいる。どこまでも広がる南国の青空の下、まるで巨大な緑の傘を開いたかのような圧倒的な存在感を放つこの樹木は、ホノルル郊外のモアナルア・ガーデンに根を張る「モンキーポッド」だ。日立グループのテレビCMでお馴染みのメロディとともに画面いっぱいに広がっていたあの光景は、昭和、平成、そして令和の時代を経た今もなお、訪れる人々に変わらぬ懐かしさと温かな感動を与え続けている。
広大な庭園に足を踏み入れ、心地よい木漏れ日の中に立つと、テレビ画面越しに見上げていた「この 木 なん の 木 の 木」の息をのむような大きさに誰もが言葉を失う。単なる企業の広告ロケーションという枠組みを超え、日米の文化交流や環境保全のシンボルとしても輝きを放つこの大樹には、あまり知られていない波乱と絆の物語が隠されていた。
「あのCMの大樹」はいまどうなっている?モアナルア・ガーデンの現在
ダニエル・K・イノウエ国際空港から車で約15分。ワイキキの喧騒から少し離れた静寂の地に、モアナルア・ガーデンはある。2026年の現在も、公園は美しく維持されており、現地を訪れる旅行者の足を惹きつけて止まない。
一時期は庭園の売却や所有者の変更に伴い、一般公開の継続が危ぶまれた時期もあった。しかし、地元コミュニティの強い想いと歴史的景観を守る取り組みによって、その雄姿は今も大切に守られている。広大な芝生の中央に立ち、直径50メートルにも及ぶ枝振りを広げる姿は、まさに圧巻の一言だ。
樹齢約140年、傘の広さは50メートル――「モンキーポッド」という生命体
この木の植物学上の名称は「アメリカネムノキ(Samanea saman)」。中南米を原産地とし、ハワイには19世紀半ばに持ち込まれたとされる。樹齢は推定140年以上。高さ約25メートル、幹の周囲は7メートルを超え、その豊かな枝葉は1本の木でありながら小さな森のような密度の濃い影を作り出す。
「モンキーポッド」という通称の由来には諸説あり、猿がその甘いサヤ状の果実を好んで食べるからだとも言われている。また、日が沈む夕暮れ時や雨が降り出す直前になると、葉をキュッと閉じる習性があるため、別名「レインツリー(雨の木)」とも呼ばれる。朝と夜でガラリと表情を変える生命のダイナミズムも、この植物の大きな魅力だ。
半世紀を超える絆――日立グループと「奇跡の木」を繋ぐ歴史
日本で最初に「この木なんの木」のCMが放映されたのは1973年のこと。実は初代CMに登場したのは実在の木ではなく、アニメーションで描かれたイラストの木だった。2代目CMから実在の樹木が採用され、オアフ島のモンキーポッドが画面に登場することとなった。
作詞・阿久悠、作曲・都倉俊一という黄金コンビが生み出した楽曲は、親しみやすいメロディと「見たこともない木」という好奇心を刺激する言葉で、一躍日本中の口ずさむヒットソングとなった。日立グループは庭園の保全と維持のために長年にわたり契約を結び、現地の環境維持を支え続けてきた。企業の社会的責任(CSR)と地域貢献の先駆的な成功例として、現地ハワイでも高く評価されている。
なぜ日本人の心に響き続けるのか?ノスタルジーと時代の変遷
日曜日の夜、家族そろってテレビを囲んでいたかつての日常。番組の冒頭で流れるあの歌は、高度経済成長期から平成の安定期にかけて、日本の多くの家庭における温かな記憶と結びついている。
動画コンテンツや短尺動画が溢れる時代になっても、この圧倒的な大自然の造形美が放つ存在感は薄れない。むしろ、目まぐるしく変化する社会の中で、「いつでも変わらずそこに立っている」という揺るぎない安心感が、若い世代の観光客にも新たなノスタルジーとして響いているようだ。SNSには今も、この木の下で笑顔を見せる旅行者たちの写真が日々投稿されている。
環境保護とコミュニティ――ハワイの自然が教える未来へのメッセージ
ハワイの人々にとって、樹木は単なる風景の一パーツではない。土地(アーナ)への敬意と、自然と共に生きる「アロハスピリット」の象徴だ。モアナルア・ガーデンはかつてハワイ王室のカメハメハ5世の所有地でもあり、歴史的・文化的に非常に神聖な場所として扱われてきた。
気候変動や生態系の変化が世界的な課題となる中、この大樹を守り育てる取り組みは、持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)のあり方を提示している。観光客がマナーを守り、静かに木と向き合うことで、貴重な自然遺産が次の世代へと受け継がれていく。
ハワイを訪れたら立ち寄りたい、大樹の下で過ごす至福の時間
もしオアフ島を訪れる機会があるなら、ぜひ午前中の早い時間帯に足を運んでみてほしい。柔らかい朝光が木々を照らし、混雑を避けて静かな時間を楽しめるからだ。
青々と茂る木陰に腰を下ろし、心地よい風に吹かれながら枝葉が擦れ合う音を聞く。木肌にそっと手を触れ、大地から吸い上げられる生命の鼓動を感じる。ただそれだけで、旅の疲れがすっと吹き飛んでいくような不思議な癒やしがある。「みんなが集まる木」という歌詞の通り、その大きな傘の下には、今も世界中からの旅人が集い、優しい時間を共有している。 (出典: この 木 なん の 木 の 木(Yahoo!ニュース))